2023年10月27日に公開され、11月10日にNetflixにて配信される映画「ザ・キラー」。
デヴィッド・フィンチャーの最高傑作とも言われるこの映画について考察してみました。
あくまで個人の感想・考察なのであしからず。
ふくろおじさんが考えた「ザ・キラー」のキャッチコピーは、
「フィンチャー流“仕事の流儀”」です。
いかがですか? だめ…?
映画「ザ・キラー」を考察
ふくろおじさんによる「ザ・キラー」の考察です。
個人の意見なので「へー」って読んでね。
SNSなどで感想を見ると賛否両論といったところであるデヴィッド・フィンチャー監督作品「ザ・キラー」。
映画好きのふくろおじさんの見解はというと、一言で述べるとデヴィッド・フィンチャーによる「プロフェッショナル 仕事の流儀」である。
そう。これはデヴィッド・フィンチャーが映画を素材として、自身の仕事論と人生哲学を説いた作品である。
まずはモノローグ中心の展開が印象的だ。
特に冒頭の20分は、延々と仕事に関する哲学を説くだけでなんの展開もないといってよい。
「セブン」や「ゲーム」のようなジェットコースター的な展開を期待していたならば、この20分はなかなかにきつい。
「計画通りやれ」「誰も信じるな」「感情移入するな」「予測しろ 即興はよせ」などなど。
暗殺者である主人公が自分に言い聞かせているという内容はわかるのだが、同時にこれは視聴者自身が言われているかのように思うだろう。
なぜなら、暗殺者という特殊な仕事を題材にしているが、実のところ、ここで述べられている哲学は、どの仕事。どの人にも当てはまる内容であるからだ。
こうした導入を経て、主人公に、いやデヴィッド・フィンチャーに視聴者は自分を重ねることになる。
しかし、そこで主人公は仕事でミスをする。
そのことが原因で、パートナーがその責任を払うことになってしまうという展開。
これも我々の日常と何ら変わりないだろう。
人生における責任は自身にだけ降りかかってくるものではない。
常に周囲を巻き込むことを留意しないといけない。
そしてその後、その責任を回収するという流れも同様だ。
仕事の責任は自分で負うのが大人である。
そんな監督自身の仕事に対する哲学、流儀が映画を通して貫かれてはいないだろうか。
そしておじさんが気になった(というか気にならざるを得なかった)のはザ・スミスの音楽である。
スミスの音楽が使われることは事前に知っていたのだが、ここまで使うかと思ってしまったのは無理もあるまい。
初めは「お、いきなりスミスか。」なんて思ってたら、とにかくスミスが流れまくる。
スミス、スミス、スミスである。というかあのモリッシーの独特の声が全編に響き渡る。
イギリス音楽好きのおじさんでも食傷気味になった…。
気を取り直し、このザ・スミスオンパレードについても考察してみようと思う。
スミスと言えば、ボーカルのモリッシーの声、詞などが象徴するように文学ロック、脱マチズモ的なロックの先駆的なバンドである。
その詞は内省的で、不安や孤独を題材にしたものも多い。モリッシーの歌い方にしてもそうだ。当時の若者の心情を反映したような不安で憂鬱な日常を声で表現している。
これらの特徴は、もちろん暗殺者である主人公の心情と深く関わるものだと推測される。
さらにはその内省的で、いわゆるマッチョなイメージのロックとはかけ離れたバンドでもあったスミスを好んで聴く主人公は、暗殺者が持つ「強さ」のイメージとも異なる。(いや、実際に映画の中の主人公は強いのだが。)
そもそも主人公はいわゆるマッチョではない。
見た目は普通の男である。
映画中盤で主人公がマッチョな敵と戦う姿は、そうしたマチズモとの対比で描かれている。
主人公は基本仕事中は、スミスを聴くのである。
他の曲は流さない。スミス一辺倒である。
日々自身をふり返り、孤独や不安と付き合いながら自己を磨いていく。
そうしたデヴィッド・フィンチャーの生きざま・哲学がここでも主人公を通して見て取れるのではないかと思う。
というか、デヴィッド・フィンチャー監督はスミスのファンらしい。
スミスが活躍したのが80年代ということからも、監督の青春時代と重なり、もしかしたら(というかかなりの確率で)、一人でプロットを練ったり、配役を考えたりするときにスミスを聴いているのだろうな、なんて想像もする。
以上のように、映画「ザ・キラー」は監督、あるいは人間デヴィッド・フィンチャーをよりよく知るための映画だと言えそうです。
ということで、「ザ・キラー」の考察を終えます。
実のところ、最後のモノローグがきちんんと頭に入らなかったので、監督のメッセージが十分にとらえきれたかどうか怪しいです。
きちんともう一度観ます。
「そんな風に観た人もいるんだね~。
(もう一度)観てみようかな…。」
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世間の評価・評判は?
デヴィッド・フィンチャー監督の最新作として話題を集めている「ザ・キラー」ですが、その世間の評価や評判はいかに?
ザ・キラー(2023)
— 木村Q (@Q95227023) November 5, 2023
ある殺し屋が仕事に失敗してしまう話。ほぼ殺し屋の行為と内面だけで展開されるつくり。その分コントロールがあらゆる箇所に行き渡り、美しいパズルを見てるような満足感。複雑で巨大な話がどんどん増える昨今で、シンプルでストロングな113分の映画であるというのもまた嬉しい。 pic.twitter.com/U9YMcopsc1
『ザ・キラー』鑑賞。いやー面白かった!暗殺者の丁寧な仕事をこれまた丁寧に執拗に描く「お仕事」映画。成功も失敗も責任も報復も生々しくバキバキにキマッた絵で見せるデヴィッド・フィンチャーの「お仕事」に唸る。ザ・スミスの楽曲を含めた爆音&低音が大事な映画なので劇場で見て正解だった! pic.twitter.com/jWKCinLJh1
— ビニールタッキー (@vinyl_tackey) November 1, 2023
『ザ・キラー』
— ムービーメン (@Stan_n_movie) October 31, 2023
非常にシンプル。
目の前で繰り広げられる美しさに心を掴まれ、文字通り鳥肌が立った。そして主演のマイケル・ファスベンダーの素晴らしい演技も相まって、セリフに重みが増している。スピード感があり、アクション要素も見事。終始緊張感が続き最後まで目が離せない映画。 pic.twitter.com/rT9OXDaVh2
『ザ・キラー』観賞。恋人を病院送りにされた殺し屋が、暴行に関与した者を一人ずつ葬っていく。
— はじめふとし (@hajimehutoshi) November 6, 2023
『ジョン・ウィック』のような娯楽要素はなく、『イコライザー』のようなカタルシスには程遠い。唯々デヴィッド・フィンチャーの鋭利な演出に酔いしれる118分。監督の、監督による、監督のための映画。 pic.twitter.com/OCSwuyXvkn
『ザ・キラー』感想。いや〜良い意味で変な映画。主人公はシリアスに仕事論を語っているんだけど、実際の仕事でその言葉に追いついていないドジっ子っぷりを見せる。その後も「落とし前」をつけていく様がシュールコメディな領域に。デヴィッド・フィンチャー監督らしい画の美学も詰まって眼福。 pic.twitter.com/1RyIu0vvPe
— ヒナタカ@映画 (@HinatakaJeF) November 5, 2023
まとめ
映画「ザ・キラー」の考察をしてきました。
ふくろおじさん的には…
デヴィッド。フィンチャー流「プロフェッショナル 仕事の流儀」。
監督が映画を通して、その仕事観、人生哲学を述べた作品だと考えます。
監督のお気に入りのザ・スミスの音楽が多用されていることからも、監督の人生の一面を垣間見た気がします。